日本映画の巨匠、黒澤明監督の数多くの作品の中でも、異色の作品といえる『夢』。
賛否両論分かれるこの映画、私は何でか好きなんだよね。
↓『夢』(1990)

「こんな夢を見た」で始まる、8つの夢のオムニバス映画。何せ「夢」なので、ストーリーの細かいところは、まあ目を瞑って、と(笑)。
見どころはやっぱり、その映像そのものにあるのかなー。それぞれのエピソードの発想と、それを美しくファンタジックに一分の隙もなく映像化しているところ。
夢の内容は、明るいもの暗いものいろいろなんだけど、個人的には第1話の狐の嫁入り、第2話の雛祭り、第5話のゴッホの絵、第8話の水車村、なんかが、単純に美しくて好きだし、第4話のトンネルの戦死兵も、じわりとくるかな。第5話でゴッホ(マーティン・スコセッシ)、第8話で103歳の老人(笠智衆)に語らせている言葉は、簡潔だけど深くて、とても伝えたかったことなんだなと分かる。
まあ、第4話では戦争、第6、7話では環境汚染や人心荒廃、第8話では高度文明、に対する批判のメッセージ性が、あまりに直接的で強すぎて、ちょっと引いてしまったりするかもしれないが・・・。
とはいえ、ワーナーブラザーズとスピルバーグが製作者として名を連ね、巨額を注ぎ込んで一流のスタッフを擁した上で、個人の「夢」を映像化するのが許されるなんて、クロサワ監督ぐらいなんだろーな(笑)。
50年代初頭~60年代半ばの黒澤監督作品って、エンタテイメント映画として、ホントに完璧で面白くて大好きなんだけど、同世代のファンって会ったことないんだよね(笑)。
何でだろ、モノクロってことや、昔の古い映画ってイメージで、敬遠されてるのかな。でも私のよく行く某所ツ○ヤなんて、小津安二郎監督、成瀬巳喜男監督、溝口健二監督、木下恵介監督らのコーナーはあるのに、なぜか黒澤監督のコーナーは無いんだよね。
以前、ある知人に、黒澤映画が好きなんだ~と話したところ、「俳優の演技とか喋り方が不自然でイヤだ」と言われたことがある。黒澤監督作品の雰囲気に慣れてしまって、そんな風に思ったことがなかったから、ビックリしたっけ(笑)。まあ確かに、その「喋り方」のせいか音響技術のせいか知らないが、この時代の作品はものすごく台詞が聞き取りにくいので、DVDで日本語字幕設定にして観るのがオススメだったりする。
↓『羅生門』(1950)

芥川龍之介の『藪の中』が原作。時は平安時代、ある殺人事件にまつわる不思議な顛末(←下人が老婆を追剥するっていう、あの『羅生門』の話ではナイ)。
ストーリーがよく分からん、などと言われがちだけど、私は初めて観た時、なんかスゴイ映画だーっ、と衝撃を受け、それから黒澤映画を観るようになったのだった。登場人物も8人だけ、場面もほとんど羅生門とお白洲と「藪の中」しか出てこないのに、脚本と演技とカメラワークと音楽で、魅せる魅せる。
↓『七人の侍』(1954)

今更言わずもがなの映画だけど・・・やっぱりスゴイ、面白い。
三船敏郎が破天荒な七人目の侍、周囲をいつもの(?)黒澤映画メンバーである志村喬、千秋実、加東大介、藤原釜足らが固め、剣の達人役の宮口精二が印象的。ストーリーの面白さは勿論、テーマも何気に深い。
他にも時代劇では、後に与えた影響は計り知れない『用心棒』に、ラストの三船敏郎と仲代達矢の決闘シーンが有名な『椿三十郎』に、スターウォーズのC-3POとR2-D2のモデルとなった強欲小心者コンビの出てくる『隠し砦の三悪人』に、黒澤ヒューマニズム映画の代表『赤ひげ』に、近年の海外資本のカラー大作『影武者』『乱』に・・・と、キリがない。
あと、黒澤映画の乗馬シーンってば、ものすごくカッコイーと思うんだけど。乗り手がいいのか演出がいいのか知らないが。『隠し砦』の「裏切り御免!」のあたりとか。
現代劇も、『生きる』『天国と地獄』などの、シリアスでテーマ性の高いヒューマンドラマには、やはり最後まで目が離せず惹きこまれてしまう。
常に何かしら新しいものを取り入れてあるところも、すごいなーと思う。
↓続きを読むで、『七人の侍』のリメイク『荒野の七人』について。この映画のファンの方は読まないで下さい(汗。
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予告どおり、私の一番好きなミュージシャン、ティル・ブレナーのご紹介♪
ティルは、はじめクラシック界で活躍し、ソロになってからはジャズに転向した、ジャンル不問のトランペッター。
現在、日本版の出ているアルバムは、古い順に以下の5枚で、もっと古いものは、日本版は出ていない。
ジャズといってもいろいろあるけど、彼の音楽は・・・ほのぼの系?(←あってる?
私の、彼の音楽との出会いは、J-WA○E日曜午後の某長寿カウントダウン番組(笑)。
ジャズなので、上位にランクインされることなく(泣)、下位だったので、一部分がちょこっと流れただけだったんだけど、そのワンフレーズで、えぇ!?ちょっとなに、今のだれ!?と、もうひと聴き惚れ。ストライクゾーンど真ん中でございマシタ(笑)。当時ネット環境になかった私は、某ネットカフェで、J-WA○EのHPから辿って調べたんだっけ(ペ○ラーさん早口すぎて聞き取れなかったのさ・・・)
↓『love』(1998)

↓『chattin with chet』(2000)

↓『blue eyed soul』(2002)

↓『that summer』(2004)

↓『oceana』(2006)

ティルはトランペットだけでなくヴォーカルもとるんだけど、私は彼のヴォーカルも好きで。何というか、決して歌が上手いとか歌唱力があるとかではないし(
失礼)、好き嫌い分かれそうな歌なんだけど、トランペットとヴォーカルどちらにしても、共通してその底を流れる歌ゴコロ?みたいなもの?に、理屈なしに惹かれるというか。
何だろう、ヨーロッパの、中でもドイツ発ってこととか、クラシック畑にいたこととか、彼自身の創意工夫で練り上げたであろう「あの」音色とか、元々の綺麗な音楽的センスとか、ええとこのボンボンらしい屈託のなさとか、真面目に真剣に、そして丁寧に創作しているらしい姿勢とか、いろんな要素で形成されてる独特の歌ゴコロがね・・・
毎回アルバムの雰囲気は違っているにも拘らず、どの曲のどこをどう切っても、ちゃんとティルの音楽になってるんだよね。基本が出来てる人は強いなーと思う。
↓続きを読むで、まだ語るらしい・・・おヒマな方のみどうぞ・・・
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祝!! 新作アルバム到着!! というわけで(どんなわけ?)、私の大好きなヴォーカリスト、マデリン・ペルーについて、勝手にご紹介♪
現在手に入る彼女のアルバムは、古い順に以下の4枚。
ジャンルは、うーむ、限りなくジャズ寄りのポップミュージック、になるのかな?
↓『dreamland』(1996) デビューアルバム

↓『got you on my mind』(2003) ウィリアム・ギャリソンとの共作

↓『careless love』(2004) デビューから8年後のセカンドアルバム

このアルバムの2曲目「don't wait too long」が、当時J-WA○Eで何度も流れていて。初めて聴いてすぐ、うわ、何これ誰これ!?と、ひと聴き惚れ。声も、歌い方も、楽曲の雰囲気も、好みのタイプど真ん中(笑)。速攻買い求めましたとも。
↓『harf the perfect world』(2006) 新作のサードアルバム

今回のアルバム、この4枚の中で一番好きかも。
プロデューサーが前作と同じなので、彼女らしさの生かされた音づくりは健在なんだけど、でも今迄のアルバムとは雰囲気が違うような。選曲のせいかな? オリジナルが4曲で、あとはカヴァーなんだけど、わりと意外な選曲で・・・4曲目の「everybody's talkin'」なんて、えぇーアナタがこれを歌う?って感じで(笑)。変わって欲しくないところは変わらず、でも新しい方向性もしっかり感じられて、ファンには嬉しい内容かと。
彼女の音楽って、一度聴いただけだと、地味かな?と思われそうなんだけど、聴けば聴くほど味が出るというか・・・。まったりした昼下がりから夜にかけて聴きたい感じ(・・・爽やかな朝とか軽快なドライブには、正直合わないけどー)。
あと、今回のアルバムで嬉しかったのは、私の一番好きなミュージシャンであるティル・ブレナーが、ゲスト参加していること。ティルはドイツ出身のジャズトランペッター。
今年春のティルのアルバムには、マデリンがゲスト出演していて、今回のマデリンの新作では、8曲目「(looking for) the heart of saturday night」と、12曲目「smile」で、ティルがトランペットを披露。間奏で控えめに演奏していて、私としてはもっと出張ってもらいたかった(笑)けど、それでもしっかりティル節(?)なんだよね。
「smile」は、チャールズ・チャップリン作曲の、映画『モダン・タイムス』のテーマ曲で、車のCMでもお馴染みのスタンダードナンバー。私も大好きな曲で、歌詞も好きで、シンプルな英語って、実は美しいし深いし表現力あるんだよな、と思える曲(私は基本的にペシミストなんで、この曲のようにはいかないけど・笑)。 とにかくこの曲をこの二人の共演で聴けるなんて、もうホント幸せv アレンジも奇をてらわず可愛い感じだし。
よし、この流れ?で、次の記事は、ティル・ブレナーの紹介にしよーっと♪
↓続きを読むで、どうでもいいボヤキ。
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紅葉が見頃を迎えています。


刻々と、木の上の方の、葉の先から順に色を変えていき、終には木全体が赤や黄色に染まり、あとは見る間に落葉して、冬支度に入ります。




思えばこんなにじっくりと、紅葉していく様を見届けたのは、初めてかもしれません。
かつては、いつのまにか紅葉して、いつのまにか散っていくものだったから。
こんなに繊細かつダイナミックなものだったとは・・・



ここでの四季それぞれの自然の姿を、ようやくひと巡り見ることができました・・・
と思っていたら、7日の午前中、ゆ、雪が~! 今季初雪!?
ちらほら・・・で、積もるようなものではないですが、早すぎ~!
6日未明にカミナリが鳴っていて、土地のお年寄りが、あれは「雪起こしのカミナリ」だ、と言っていたのですが・・・当たってる・・・
翌日ホントに早速雪が降るなんて、さすが(笑)!!
↓大山の中腹に位置する、角磐山大山寺。
奈良時代の開山といわれる、歴史ある天台宗の古刹。山岳信仰に基づく修験道の修行道場として栄え、戦国時代には3000人以上の僧兵をかかえて勢力を誇った。その後は権力や戦乱に翻弄されて寺運を衰退させつつも、法憧を受け継ぎ、現在は山陰の名刹としてその名を知られる。
ご本尊は地蔵菩薩坐像。お地蔵さまの坐像って珍しいな、立像が多いから。参道には石造のお馴染のお地蔵さまも、幾体か祀られている。

本堂の奥に、鬱蒼とした木々に囲まれて、↓権現造りの壮大な社殿を持つ、大神山神社奥宮がひっそりとたたずむ。
神仏習合の中で大山寺と大神山神社奥宮はともに勢力を拡大するが、明治初年の神仏分離令により、大山寺から分離された。

大神山神社奥宮までは、↓長い長い石畳が続いている。
今の季節、舞い落ちてくる落葉がいい感じ。


こういう石畳って京都を思い出すけど、うーん、京都の凛と洗練された雰囲気とは全く違って、野趣があるというか。
参道を少し脇にそれると、大山寺が地蔵菩薩を本尊とするだけあって、お誂え向きの「賽の河原」もあり、大山の威容と相俟って、これがなかなか雰囲気がそれっぽいのだ・・・